Linuxディストリビューションとは?人気のディストリビューションを紹介します

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Linuxにはディストリビューションという言葉があります。 これはLinuxの種類のようなものを指す言葉で、Windows10とWindows8のような「バージョンの違い」とは異なる、別の意味をもっています。 そして一般的に「Linuxを使う」という場合、数あるディストリビューションの中から自分の好きなものを選んで使うことになります。

今日はこのディストリビューションについてです。

Linuxとディストリビューションの違い

LinuxのディストリビューションについてWikipediaで調べると、次のように書かれています。

Linuxディストリビューションとは、Linuxを一般利用者がインストールしたり、利用できる形にまとめ上げたもの(distribution=配布・流通・頒布形態)。

なるほど、と言いたいところですが、初めての場合は意味が分からない部分もあるかもしれません。

というのも、LinuxとはそもそもLinuxの中核であるカーネルのことを指す言葉だからです。 このカーネルはあくまでも中核を担うプログラムに過ぎませんから、僕らが日常的に行っている「ブラウザを開いてYouTubeを見る」といった行為のためには、カーネル以外にもさらに多くのプログラムが必要となってくる訳です。

つまり、このような当たり前のことができる状態にまで構築してあるのがディストリビューションという訳です。

しかし一般的にLinuxと言うと、数あるディストリビューションを束ねる総称のような使われ方をしており、直接Linuxカーネルのことを指して使っているのはエキスパートに限られるように思います。

ディストリビューションが複数ある理由

既に説明したように、ディストリビューションとは、開発プロジェクトの方々がある種の思想・方針をもって、プログラム(ソフトウェア)をパッケージングしたものです。

このページを見ている人はおそらくWindowsやMacに満足できず、Linuxを考え始めている人だと思いますが、まさにそれと同じように、ディストリビューションの開発者たちも、何らかの理由でそのプロジェクトを立ち上げているのです。

たとえば、Ubuntuのように誰にでも使いやすいOSを目指しているものもあれば、ハッキング対策目的のためのKaliLinuxなんてのもあったりと、それぞれ得意なものが違ってきます。 ちなみにスマホのAndroidもLinuxディストリビューションの1つだったりします。

ディストリビューションの開発プロジェクトは数多く存在していますが、活動停止で消えていくプロジェクトもあれば、立ち上げて間もないプロジェクトもあり、WindowsやMac同様に情勢は変わっていきます。

時折、自分にあったディストリビューションとは何かを考えてみるのも良いかもしれませんね!

Linuxディストリビューションの三大系統

RedHat系

RedHat
redhat.com

RedHat社による有償ディストリビューションの代表的存在であり、そのプロダクトであるRed Hat Enterprise Linuxは商業的に最も成功しているといって過言ではないようです。

そしてこのRed Hat Enterpricse LinuxはRHELと略されることが多く、サーバー用途でよく登場するCentOSはRHELクローン的なディストリビューションだったりします。

RedHat系は主として企業のサーバー用途で使われることが多く、専用の資格試験も存在するほどです。 もし仕事で使うことを目指すならば、RedHat系は避けられないディストリビューションになるでしょう。

パッケージ管理システムとしてRPMを使用。

RedHat系の有名なディストリビューション

  • RHEL
  • CentOS
  • Fedora

Debian系

Debian
debian.org

GNUプロジェクトの精神である「自由」を理念の柱に据えており、利用・変更・配布に関して「無料であり自由」という立場を取っているのがDebianです。 RedHat系とは異なり、コミュニティベースで開発が進められているのも大きな特徴でしょう。

使用用途としては、個人用途のデスクトップから大企業のシステムまで広く使われており、裾野はかなり広くなっています。

パッケージ管理システムとしてdpkgやaptを使用。

Debian系の有名なディストリビューション

  • Ubuntu
  • Linux Mint
  • ZorinOS
  • Kali Linux

Slackware系

Slackware
slackware.com

Linux普及初期から存在するディストリビューションがこのSlackwareで、最も古いLinuxディストリビューションの一つ。 シンプルさと安定性の高さに定評があるディストリビューションですが、次に述べる点から少し取っつきにくい存在とも言えそうです。

まずSlackwareとこれまでに紹介したRedHat系やDebian系との大きな違いは、Slackwareにはaptやrpmのようなパッケージ間の依存関係の解決をしてくれる便利なパッケージ管理システムは用意されていないことにあります。 もちろんslackpkgのように専用のパッケージ管理システムはありますが、依存関係の解決まではしてくれません。 そのため、このOSを使いこなすにはパッケージ管理を自力で行う必要がある、ということを意味します。

しかし、それだけシンプルで自由度が高いOSとも言えるため、安定性は高く堅牢なシステムになっており、熱狂的なファンも一定数存在します。 また、Linuxを学ぶためにも良いディストリビューションであるとも言われています。

Slackware系の有名なディストリビューション

  • Slackware
  • openSUSE

Linuxで人気のディストリビューション

ここからはLinuxの中でも特に有名なディストリビューションについて触れていきます。 DistroWatch.comというサイトでその時々の人気のディストリビューションを確認できるので、今日時点での人気のディストリビューションについて上から見ていきます。

1. MX Linux

MX Linux
mxlinux.org

MX LinuxはantiXとMEPISという2つのプロジェクトによる合同プロジェクトで、いま世界的に流行りつつあるディストリビューションの一つです。

元々軽量級のディストリビューションであるantiXでしたが、MX Linuxではそれぞれのディストリビューションの良い部分を継承し、さらにデスクトップ環境をXfce4へと変更することで、使い勝手を向上させながらも高い効率性と安定性を確保しています。

特にMXスナップショットという独自のツールが評判で、自分のシステムのクローンをISOファイルとして出力することができるようになっています。 これをUSBメモリ等に保存すれば、ライブセッションで独自の環境を使うことが可能になりますし、また、いつでもその状態へとシステムを戻すことも可能になってきます。

系統はDebianです。

2. Manjaro

Manjaro
ja.m.wikipedia.org

Arch LinuxをベースにしているのがManjaroです。 全体的にArch Linuxの利点をそのまま受け継いでいます。

そもそもArch Linuxというのは、「軽量かつシンプルな設計で、最小構成から自分の好きなシステムを構築することができる」ということで割と人気のあるディストリビューションの1つでしたが、インストールの段階から既に、初心者には難易度が高く感じられるように作られています。 Manjaroはこれを万人受けするようにカスタマイズした感じに仕上げており、問題のインストールについてもグラフィカルなインストーラーが用意されるなど、全体的な難易度が大きく緩和されています。

またこうした理由からも分かるように、ManjaroとArch Linuxには互換性があるため、Arch Linuxで使われるソフトウェア資産はManjaroでも使用可能となっています。 もちろんManjaro独自のリポジトリも用意されているので、ソフトウェアについてはかなり充実しています。

他に特徴的な要素としては、ローリング・リリースというシステムのリリース方式でしょう。 これもまたArch Linuxからの要素ですが、常に最新バージョンのシステム」を安定性を損なわずに使用可能というのは、固定リリース方式にはないメリットと言われています。

パッケージ管理システムとしてPacmanを使用。

3. Linux Mint

Linux Mint
ja.m.wikipedia.org

ここまでのディストリビューションとは違い、Linux Mintはエレガントで快適なデスクトップマシンを目的として構築されたディストリビューションです。

Linuxで重要視されやすいシンプルさよりも、誰にでも使いやすいマシンを目指したこともあり、UIはWindowsのそれとかなり似通っています。 Windowsから初めてLinuxへと移行するユーザーには特に使いやすいディストリビューションの1つに入るはずです。

Linux Mintは後に紹介するUbuntuをベースに作られているので、使用できるソフトウェアもほとんど一緒になってきますが、Linux Mintもまた独自のmintToolsと呼ばれるアプリケーション群を用意しているので、そのあたりでも差別化が図られています。 また、Cinnamonという元々Linux Mint向けに開発されたデスクトップ環境も用意されています。

リリースサイクルはUbuntuの約1ヶ月後となっています。

4. Debian

Debian
ja.m.wikipedia.org

既に紹介したDebianですが、現時点での使用率でも4位と、かなり高いポジションをキープしています。 そのことからも分かるように、Debianのコミュニティ規模は世界的にみても最大級です。

また、このリスト内に上がっている多くが元を辿ればDebianに辿り着くように、Linuxの発展に大きく貢献しているディストリビューションと言えるでしょう。

特徴らしい特徴といえば、バージョンアップの頻度は比較的ゆるやかな方で、その中身もどちらかといえば保守的で安定性を重視している点。

5. Ubuntu

Ubuntu
commons.wikimedia.org

近年のLinuxの普及を大きく推し進めたのがおそらくこのUbuntuで、今でも世界のシェア率ではトップを占めるディストリビューションです。 そのため日本語での情報が一番手に入りやすいLinuxといえば、今現在も間違いなくUbuntuです。

そんな世界で一番使われているUbuntuですが、Debianがベースとなって作られており、「誰にでも使いやすい最新かつ安定したOS」という目標が掲げられています。

Debianとの違いとしては、ドライバのインストールやシステム自体のバージョンアップが簡単になっていることや、新しいデバイスに対するサポートが強化されていること、デフォルト状態でのセキュリティを高め、より安全な方向へと修正していることがあげられます。

Debianが専門家向けであるならば、Ubuntuは初心者でも安心して使えるように作られたOSと言えるでしょうね。

6. elementary OS

elementary OS
commons.wikimedia.org

elementary OSはLinux Mint同様にUbuntuをベースにしたディストリビューションで、キャッチコピーは「高速でオープン、かつプライバシーを尊重する、Windows や macOS の代わりになる OS」となっています。

独自のPantheonと呼ばれるデスクトップ環境を使用しており、見た目はほぼMacそのもの。 まぁそれもそのはずで、設計理念の一つに「全体的な美観の向上」が挙げられていることからも、ビジュアル面を重視している様子は伺えます。

「Ubuntuは好きだけど、もっとイケてるOSが使いたい」

こんなユーザーには割とすんなり受け入れてもらえそうな気がします。

7. Solus

Solus
getsol.us

Solusはこの中では唯一のゼロベースで新たに構築されたディストリビューションになります。 独立系のディストリビューションですね。 そしてManjaroのようにローリング・リリース方式を取っている数少ない存在でもあります。

独自のデスクトップ環境Budgieが用意されており、画像を見ての通り、モダンで非常に整ったインターフェースを持っています。

しかし「使いやすさ」という点では、コミュニティ規模の大きさやArch Linuxのドキュメントがそのまま利用できるManjaroと比較してしまうと、どうしても劣っているように思えてなりません。

新しいモノ好きな方には試してみる価値があるかも?

8. Zorin OS

Zorin OS
commons.wikimedia.org

Zorin OSもまたUbuntuをベースにしたディストリビューションになります。 elementary OSがMacを意識していたように、このZorin OSはWindowsを意識していて、見た目だけでなく操作性においてもWindowsにそっくりです。

他のディストリビューションとは違って、このディストリビューションにはエディションが幾つか用意されています。 基本的には無料ですが、最上位にあたるUltimateというエディションだけは$39という値段で販売されています。

9. Fedora

Fedora
commons.wikimedia.org

RedHat社がスポンサーになっているのがこのFedoraです。 そのRedHat社にとってのFedoraの位置付けは簡単に言えば「試験場」です。 そのためFedoraには最新の技術がふんだんに取り入れられることになっています。 そしてFedoraで十分にテストされ安全性が確保された技術が、製品版であるRHELへと反映される流れになっています。

したがって、Fedoraというのは、最新技術に触れることができる一方で、安定性はさほど望めないシステムということになりがちです。 また、こうした仕組みを反映してか、Fedoraのバージョンアップのサイクルはかなり短く設定されており、長期間安定して使用し続けるのも難しいOSとも言えそうです。

業務でRHELやCentOSを現在進行系で使用している方には面白いディストリビューションになるかもしれませんね。

パッケージ管理システムはRHELと同じRPMです。

おすすめのディストリビューション【結局どれが良いの?】

トレンドを考えるとMX Linuxと行きたいところですが、日本語の情報量はまだまだ少なく、それを考えるとやはりMX Linuxは中上級者向けのディストリビューションになると思います。 なので、そういう面を考慮すると、2位につけてるManjaroの方が割とすんなり導入できると思います。 ただ、最先端を追いかけるManjaroと安定を重視するMX Linuxとでは対象ユーザーが大きく変わってくるはず(好むユーザー層が違うはず)なので、必ずしもManjaroの方が良いとは言い切れない部分もある気がします。

一方で、もし初めてLinuxに触れる方であれば、UbuntuやLinuxMint、あるいはelementaryOSあたりから始めるのが正解になるでしょう。

Ubuntu系はとにかくユーザー数が最大の武器です。 情報の入手性に関しては間違いなくダントツです。 何か困ったことがあれば、大抵ググれば解決しまし、プリンター等の外部デバイスとの接続の面でもさほど困ることもありません。 こうした理由から、初心者にとってはメリットしかないディストリビューションと言っても間違いじゃないはずです。

僕は近々リリース予定のUbuntu20.04へ移行する予定ですが、その前にMX Linuxも触ってみるつもりです。

以上、今日はこれにて!

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